(初出:note 執筆日:2015年11月16)
鏡を見たら、私の後ろに知らない人が立っていた。
振り返ると誰もいない。
再び鏡を見ると、やはりいる。
髪の長い綺麗な顔した女の子。年齢は十四、五ぐらい。
鏡越しに私を見つめて、にっこりと笑った。
「迎えにきたよ」
彼女はそう唇を動かして、手を伸ばしてきた。
ガシッと後ろから腕をつかまれる感触。
とっさに振り返っても、やっぱり誰もいない。
だけど腕は強くつかまれたように痛かった。
声も出ずにいると、ぐいぐいと引っ張られる。
部屋の窓が勝手に開き、外からは豪雨と暴風が入り込む。
空は真っ暗だ。遠くに聞こえるカミナリの音。
ここはマンションの十階。
「あ」
それしか声が出なかった。
気づいた時には空中に放り出されていて、そして何もわからなくなった。