(執筆日:2009年07月13日)
私は北丘葵(きたおか・あおい)、十七歳の高校二年生。ごく普通の女の子。
優しいお父さんとお母さんに育てられ、学校にも友達がいっぱいいて、毎日が楽しくて充実してる。日々に対する不満も特にないし、勉強は大変だけど頑張ってるし。
こんな楽しい日常が、ずっと続けばいいのになって思ってた。
「転校生?」
夏休みが終わって二学期のスタート。クラスメートのユカリちゃんが、どこかから噂を聞きつけてきて、朝からそんな話をみんなへと振る舞っていた。
「それがね、超イケメンなの!」
ユカリちゃんの周囲に集まる女子たちが、一斉に黄色い悲鳴をあげて盛り上がった。逆に男子たちはすごくつまらなさそうにしていた。
どうやらユカリちゃんは職員室へ覗きに行ったみたいで、その第一印象を熱心に語り続けていた。
やがてホームルームが始まり、担任の先生が教室へと入ってくる。ボサッとして冴えない男性教師の篠塚先生の後ろを、見知らぬ人物がついてきた。
ズボンのポケットに両手を突っ込んで、どこかつまらなさそうな表情。百七十台半ばを軽く超えていそうなぐらい、背が高い。愛想はまるでないものの、顔は驚くほど整っていた。パッチリとした黒目はすごく意志が強そうだ。
「今日からこの学校へ通うことになった、各務来斗(かがみ・らいと)くんだ。みんな仲良くするように」
「よろしく」
各務来斗くんはボソッとそれだけ言うと、ペコリと頭を下げた。確かにカッコイイんだけど、愛嬌がないのはどうなのかなぁ、というのが私の第一印象だった。