その日、僕は虹をつかまえた。
まるでバームクーヘンを半分に割ったような形をしていて、七色がきれいに並んでいる。
僕はそれを一本一本わけてみた。
七色の棒が七本できあがった。それぞれみんな長さが違う。
まるでグミのように柔らかく、僕はこれが本当に虹だったのかなと不思議に思い始めた。
七本の棒になった虹を並べてくっつけた。でも、元の虹になることはもうなかった。
もしかしたら僕は虹をつかまえた夢を見ただけなのかもしれない。
その夜、寝ていたら空から三日月がやってきた。
「つかまえた虹を返してください」
三日月は僕の返事を聞くこともなく、並べてくっつけた七本の棒を尖った先ですくい上げた。
そのまま夜空へと帰っていく。僕は呆然と見送った。
たちまち空から星が消え、大雨が降ってきた。雨は夜通し振り続けた。
翌朝、目覚めた僕は空を見上げた。
眩しいほどの青い空に、虹がかかっていた。
ああ、僕が並べてくっつけた虹だ。そう思った。なぜなら空にかかる虹が、すごくいびつな形をしていたからだ。
僕が並べた通りに、僕がくっつけた通りになっていた。
虹はじきに消え、後に残るのは快晴の空。
それ以来、あの虹とは出会えていない。
END