(初出:不明 執筆日:2005年05月02日)
カオルは学校帰りの道で、ひとつの水たまりを見つけた。
そこには見知らぬ世界が映し出されていたので、カオルはつい足を止めてまじまじと観察をした。
水たまりの中に広がる世界は、日本とはほど遠いどこかの国のどこかの民族で、カオルは一瞬「テレビを見ているみたいだ」と思った。
見知らぬ国の人々が、それぞれの生活をしている光景だった。
カオルは顔をあげ、周囲を見渡した。
ごく普通の日常、ごく普通の日本の光景が広がっていた。
再び水たまりの中を覗き込むと、やはり見知らぬ国の見知らぬ生活が繰り広げられていた。
カオルは急に怖くなり、足早に水たまりを後にした。
翌日、同じ道を帰ったカオルは乾いた道路を見つけた。
昨日の水たまりはもうキレイになくなっていた。
安堵しながらその道を通りすぎ、家へと着いた。
玄関の鍵をはずし、ドアノブを握る。
開かれたドアの向こう側には、見知らぬ世界だけが広がっていた。
どこかで見たことのある光景だと、カオルは思った。
そこは家の中のはずなのに、家の中ではなくなっていた。
そう、これは。
あの水たまりの中の……。
END