太陽の風・月の空 4

(執筆日:2009年07月16日)

 翌日の体育の授業を境に、各務くんと周囲の男子たちの距離が縮まっていた。
 それに気づいたのは昼休みの時で、あんなに女子に対しては無愛想だったのに、声をかけてきた男子に対しては笑顔で返事をしていたのだ。
 でも女子に対しては相変わらず。急につまらなさそうな顔になる。
 そんなにモテるのが嫌なの? それとも実は男のほうが好きなの?
 変な風に勘ぐってしまいたくなった。
 あんなにとっつきが悪くてクラス内で浮いていたはずの各務くんは、あっという間に男子たちとは仲良くなってしまい、普通に喋ったり笑ったりしている。
 たちまち不思議な雰囲気が消えて、急に普通の男子になってしまったような気分だった。そう思ったのは私だけじゃなくて、周りの女子たちも同じことを思っていたらしい。
「なんか各務くんて、たった一日で雰囲気変わっちゃったね」
「でも女子には相変わらずだよ」
「男同士のほうが楽しいのかなぁ」
「もしかして、女に興味がないとか?」
 そんな噂話の標的になっていることに、気づいているのかいないのか。各務くんは女子の動向になどまったく興味ない素振りで、マイペースに過ごしていた。

 今日は部活動が休みだから、放課後になったらすぐ帰るつもりでいた。
 ところが、校舎の外では土砂降りの雨。折り畳み傘を持ってこなかったことを、ものすごく後悔した。
 校舎の入口で立ち往生していると、突然背後から男子に声をかけられた。
「あれ、おまえもしかして、傘ねぇの?」
 傘の柄と思われる部分で、背中をつつかれた。
 反射的にムカッときて、睨みつけるようにして振り返ると、そこに立っていたのは各務くんだった。
 各務くんは女子とはロクに喋ろうともしない。そんな情報が脳にインプットされていたから、私は各務くんを見つめたまま、ポカンとしてしまった。

つづく

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