(執筆日:2008年01月26日)
「まずは街の中で情報収集することから始めてくださいな。頑張ってくださーい」
酒場の女性に外へと追い出された。
「ちぇっ」
改めて街の中を眺めた。RPGらしく、中世ヨーロッパの下町風な建物がいっぱい並んでいる。ほとんどが家か店だった。アダルトコンテンツがあるはずだが、どこにあるのだろうかと龍介はキョロキョロとする。
「わっかんねぇ。どこなんだ?」
素直に情報収集するしかなさそうだった。
街の中を歩いていると、同じく初心者らしき人たちがたくさん歩いている。みんな同じ服を着ているから、初心者は一目でわかってしまうのだ。
「早く着替えてぇよ……」
途中で店を見つけたが、所持金ゼロでは入る気にもなれない。情報収集と言ってもどうすればいいのかわからず、龍介は無駄にウロウロしていた。
外壁に囲まれた街とは言え、とてつもなく広い。スタート地点のとは違う酒場を見つけたので、とりあえずそこへ入ってみた。
龍介が酒場に入ると、カウンター席で酒らしきものを飲んでいる青年が顔をあげた。ゲーム内の時間はいま昼間だ。
「うわ、昼間っから飲んでる……」
ぼそっと呟いたつもりだが、龍介の声は聞こえてしまったらしい。青年が軽く眉をひそめた。
「おい、そこの初心者。おまえゲームのこと何も知らないだろ」
いきなり指を突きつけられ、龍介はギョッとした。
「こっちに来い。レクチャーしてやる」
「え、遠慮します……っ」
龍介は焦った。青年は美男子だが、なんだかガラが悪そうに思えたのだ。
青年は酒をカウンターに置いたまま、椅子から立ち上がった。龍介よりも背が高い。マッチョなわけじゃないのに、腕っぷしが強そうだ。
それもそのはず、青年は頑丈そうな鎧を身にまとい、腰には立派な剣が吊り下がっていたのだ。