(執筆日:2008年01月29日)
もうどうにもならないほど切羽詰った頃、龍介はエルクの腕に強く抱きしめられ、溶けてしまいそうになりながら達していた。
宿屋のベッドに寝かされてじきに、龍介はゲームの世界から追い出された。
放心状態だった。
ヘッドセットを床へ置き、しばらくぼうっとする。
身体が熱かった。
下腹部が気持ち悪いのでさわってみたら、まるで夢精でもしたように濡れそぼっていた。
「……なにやってんだ、俺」
自嘲気味に呟いて、よろめく足取りで立ち上がり、とりあえず着替えた。
まだ体内に何かが入っているような気がする。すべてはゲーム内のことで、現実に犯されたわけではないのに。
胸に手を当てると、まだドキドキとしていた。
「……やべぇ。こんなはずでは」
龍介の目的は男女のエロであり、男同士のエロではなかったはずだ。
「どーしよう。俺、ノーマルなのに」
エルクがどこの誰なのか気になってしょうがない。龍介が現実にいるように、エルクもこの日本のどこかにいるはずなのだ。
「あぁ、でも、顔とかゲームの中とは違うんだよな。人のこと言えねーけど」
深くため息をつき、龍介はそのまましばらく何もせずに放心していた。
煙草の煙が室内を揺らめいている。
テーブルに頬杖をつく男。
「ひさびさに楽しくなってきた」
笑みの形に引き上げられる唇。
「現実に影響が出るぐらい鍛えてやらねぇと、な」
楽しげな声が室内に響いていた。