旧・悠久の大陸 19

(執筆日:2008年01月27日)

 電気のような近代的なものはないはずの世界で、シャワーがあるのは謎だった。しかも宿屋の個室ひとつひとつにきちんと風呂がついているのはおかしい。
(これはやっぱり日本生まれの日本のゲームだから、風呂好きな日本人のためにありえないシャワー設備もつけてると考えれば正解なのかな?)
 ベッドの中でぐったりとしながら、龍介はそんなことを考えていた。
 エルクは一人でシャワーに入っている。龍介だって早く洗いたい。しかし身体が鉛のように重く、とても動けそうにない。
(お父さん、お母さん、ごめんなさい。俺はとうとう男に犯されてしまいました。さらに最悪なことに、俺は気持ちいいと思ってしまいました。本当に嫌だったのに……)
 また涙が溢れてきた。こんなに泣き虫ではなかったはずだ。今日だけで相当泣いている。
 やがてエルクがシャワーから出てきた。
「おまえも入って来いよ」
「動けねぇんだよ」
 背中を向けたまま龍介は答えた。また泣いてることがバレるとバカにされそうで、必死で涙を拭う。
「また泣いてんのかよ。男のくせによく泣くなあ」
 あっさりバレた。
 龍介はベッドの中で、ひたすら落ち込むしかない。もう返事もしたくないと思ってまぶたを閉じると、ギシ、とベッドが鳴った。
 龍介を挟むように両腕をベッドにつき、エルクが上にいた。
 首筋に唇が乗り、龍介は内心で慌てた。実際には身動きのひとつもできなかった。
 耳の後ろの辺りをゆっくりと舐められ、龍介はビクッとして強く目をつむった。
「……っ」
「このゲームで選べる職業の中に、男娼ってあるんだけど、おまえもしかしたら目指せるんじゃねぇ?なんかすっげー似合いそう」
 クスクスと楽しげに笑いながらエルクが囁いた。龍介はもちろん頭に来て、力づくでエルクを突き飛ばした。
「っざけんじゃねぇぞ、てめえっ。俺が弱いからってつけあがりやがってっ!」
「……なかなか威勢がいいじゃねぇか。その調子でモンスターとも戦ってみろよ」
 挑発的にエルクが笑った。龍介の怒りはますますエスカレートする。
「ああっ、戦ってやろーじゃねーかっ。俺の方が強くなった時、今度はこっちが泣かしてやるよっ!」

つづく