勇者になんてなりたくないのに 4

(初掲載日:2014年4月23日)

 ラムダはなぜ自分がこんな目に遭っているのか、さっぱりわからなかった。もし女に生まれていれば、きっと警戒も怠らなかっただろう。だが自分は男で、同性からそんな目で見られることがあるなんて、これまで考えたこともなかった。少なくとも村では、そのような扱いをされたことなどない。
 シグマは手の中に握りこんだそれを何度かしごいた後、今度は口に含んだ。生暖かく濡れた場所に吸い上げられたラムダは、たちまち我慢できなくなり、小さな悲鳴をあげてのけぞった。
 あっという間に達してしまったことを恥じる余裕も与えられぬまま、シグマの手が今度は違う場所へと移動する。さらに下にある小さな窄まりに、ラムダの放った精液を塗りこまれた。
「やっ……やめっ……」
「ラムダ殿のここは狭いですね。まだ誰にも触れられたことがないんですね」
 シグマはラムダの足を左右に押し開き、キュッと締まった小さな穴に小指を差し込んだ。第一関節までを挿れ、ゆっくりと引き抜いた。
「……シグマ、さんっ……そこは、やだ……っ」
「いずれ慣れればあなたのほうから欲しがるようになりますよ」
 シグマはほくそ笑んで、再び小指の先を押し挿れた。
 軽く内部をかき回され、反射的にラムダは手近なシーツを掴む。
「くっ……はっ……」
「力を抜いたほうが気持ちよくなれますよ」
 諭すような声でシグマが言った。
「それとも、私の指を締めつけているほうが気持ちいいんですか?」
 言われて初めて、ラムダは自分がシグマの小指を締めつけていたことに気がついた。
 恥ずかしくなって、慌てて全身の力を抜く。それがいけなかった。
 タイミングを見計らったように、今度はシグマの中指が奥まで押し込まれる。
「ひゃっ……」
 ふいに始まった抽挿に、ラムダは慌てた。
「やだ……っ、やめ……てっ」
 必死でもがいたが、シグマの手を止めることはできなかった。彼はまるで何かに取り憑かれたように、執拗にそこばかり刺激してくる。内蔵をかき回されているようで、それほど気持ちよくはなかった。
 だが、観念して少しずつ身を委ねていくと、それまでとは違った感覚がラムダを支配しはじめる。
 やがてラムダの身体から抵抗の力が抜け、声や吐息に甘いものが混ざり始めると、シグマは満足したように微笑んだ。
「気持ちよくなってきたようですね」
「……ちがっ……」
 ラムダは嫌がるように左右に頭を振ったが、シグマの指摘が間違いではないことにも気づいていた。
 ベッドに全身を投げ出し、シーツをきつく掴みながら身をよじる。あられもない姿をさらけだしている自覚はあった。
 いつしかシグマの指も二本に増やされており、狭い内部を押し開くように、抜き差しを繰り返している。粘膜を強くこすられると、ラムダは軽いめまいに襲われた。
「もう、我慢できないんですが、挿れてもいいですか」
「えっ……だめっ……」
 切羽詰まったようなシグマの願いを、ラムダは反射的に却下した。
「もう今さらやめられませんよ。挿れますね」
 シグマはもともと許可を取るつもりなどなかったのだろう。ズボンをくつろげると、雄々しくそそり立ったものを引っ張りだした。
 すんなりと入らないことは予想済みだったのだろう。シグマは液体の入った小瓶をポケットから取り出すと、フタを開けて自身に垂らした。残りの液体をラムダの窄まりに注ぎ込み、充分に慣らしてから先端をあてがった。
 ラムダは彼があらかじめ小瓶を用意していたことに驚いたが、狭い器官を押し広げるように入ってきた硬さと痛みに、それどころではなくなった。
「やだ……待って……」
「もう待てませんよ。観念してください」
 シグマはラムダの両足を腕に担ぎ、ゆっくりと腰を進めていく。侵食される実感を覚えながら、ラムダは苦しげに眉根を寄せた。
「……んっ……」
「あんなに狭かったのに、ちゃんと入るんですね」
 感心するような声でシグマが告げた。
 指摘されたくなかったラムダは、唇を噛み締めながら左右に首を振る。
 シグマは根本まですべて押し込むと、ラムダの身体を軽く揺すった。
「んっ、う……っ」
「ラムダ殿の中、きつくて暖かいですよ。思っていた以上に具合がいい」
「……やっ……言わないで……」
 ラムダが嫌がると、それを楽しむようにシグマが微笑んだ。
「ちょっと動くたびに、ギュッと締めつけてくるんですよ。まるで離すまいとしているかのように」
「……そんなっ、あっ、動かないで……っ」
 ラムダが嫌がるように頭を振ると、シグマはその髪に手をやり、優しく撫でた。
「何を言ってるんですか。動くために挿れたんですよ」
 シグマが腰を引くと、ラムダはビクンッとのけぞった。
 初めのうちはシグマも優しく動いていたが、次第に我慢できなくなったのか、だんだんと激しさを増していく。最初は仰向けだったラムダも、いつしかシグマの好む形に転がされ、最終的には四つん這いにされていた。
 もう頭の中は真っ白だった。何も考えられない。獣のように喘ぎ、うめき、与えられる快楽に溺れていた。酒の入ったミルクの影響もあるのか、ラムダが理性を手放すまで、それほど時間はかからなかった。
 激しく腰を穿たれ、ラムダの上半身が崩れ落ちる。
「……あっあぁっ……もぅ、許して……っ」
「残念だけど……あなたの乱れ方が美しすぎて許してあげられない」
 シグマの呼吸もすっかり荒くなり、囁きかける声もかすれていた。
「頭がおかしくなりそうなのは、こっちのほうだ。こんな姿を見せられたら、もうあなたを手放せなくなってしまう」
 ベッドに崩れ落ちたラムダのむき出しになった背中に、シグマは愛おしげに口づけた。
「あなたの初めてを奪えてよかった」
 シグマは再び腰を加速させると、次第に昇りつめていく。ラムダはがくがくと震えながら、同様に昇りつめていった。
 ひときわ強く貫かれた瞬間、ラムダの唇から悲鳴があがる。全身が痙攣したように小刻みに震え、白濁の体液を盛大に放った。ほぼ同時にシグマも頂点に達し、ラムダの体内に欲望を叩きつけた。
 がくりとラムダの全身がベッドに崩れ、しどけない姿のまま息を切らす。シグマは激しい呼吸もそのままに、崩れ落ちたラムダの身体を愛おしげにかき抱いた。頬を捉えると、やや乱暴に口づける。
 ラムダは操られたように舌を差し出し、シグマのされるがままになった。絡み合う舌に快感を覚えながら、ラムダは遠慮がちに応えていく。
 この瞬間、先のことは何も考えなかった。今後の二人の行方のことも、魔王を倒す役割のことも、何もかもが意識から飛んでいた。
 初めのうちはあんなに嫌だと思っていたのに、今は漠然と愛されることの心地よさを感じていた。
 シグマに対して恋愛感情があるのかどうか、ラムダにはまだわからない。だが、こんな風に激しく求められるのは、悪くない気分だった。

つづく