バレンタインデー

「これやるよ」
「なんだこれ」
「見りゃわかんだろチョコだよチョコ」
「なんで男から男に?」
「そ、そりゃ俺がおまえのこと好きだからに決まってんだろっ」
「えっ…知らなかった」
「ぜってー食えよ」
「う、うん…」
「食わずに捨てたらぶっ飛ばすからな」
「わかったよ…」
「なんか嬉しくなさそうだな」
「い、いや嬉しいよ」
「もしかして本当にいらなかったのか?」
「そんなことねぇよ」
「もしかして俺、嫌われてるのか?」
「い、いや、好きだよ」
「えっ!!」
「あ、好きと言っても友達としての…」
「ホントか?俺のこと好きって言ったな?」
「いや、好きは好きだけど」
「よっしゃ、じゃあキスしようぜ」
「えっ」
「好きって言ったじゃねーか。しようぜキス」
「え…俺からするのか?」
「そうだよ」
「俺から?」
「なんだよ嫌なのかよ」
「嫌ではないけど…」
「(目を閉じて待つ)」
「…わかったよ。しょうがないな」
互いの唇がくっつく。
「…(そっと目を開ける)」
「…(流れのまましてしまった)」
「…おまえ、キスうまいな(ニコッ)」
「えっ(ドキッ)」
「じゃあまた明日な(ぱたぱたと走り去る)」
「ちょっ待っ…(ここにきていきなり俺は置き去りかっ)」
手元のチョコを見つめる。
「今まで友達としてしか見てなかったのに…ドキドキしてるよ、どうしよう…とりあえずもらったチョコでも食うか。(箱から出す)あれ、手作り?しかも美味い。男のくせに、あいつチョコ作りうまいのか。成り行きでチューもしちまったし、俺、なんか落ちそうだ…あああ…」
そして彼は自分を見失いましたとさ。