悠久の大陸 9

(掲載日:2017年02月27日)

 リュウトはがっしりとナツキの腰をつかみ、ギリギリまで引き抜いては奥まで突き入れてくる。尻にリュウトの股間が叩きつけられるたびに、ナツキの喉からは声が溢れ出してしまう。
「あ、あっ……んっ、やっ、そこっ、やだ……っ」
 突かれるとどうにもたまらない場所があった。意識が吹き飛びそうになる。嫌だと言っている場所がそうなのだが、リュウトはすべてお見通しなのか、嫌がる場所ほど激しく突き上げてくる。
「あっ、あっ、あぁっ、あっ、だめっ、そこっ、やだっ……」
 這い上がってくる快感に耐えられず、ナツキはベッドのシーツを強く握りしめた。まるでねだるように、腰が妖しく動いてしまう。
 いつしか、リュウトの腰を叩きつけてくる速度が増していた。遠慮のない動きにナツキは翻弄されながらも、必死でついていくしかない。粘膜が熱くしびれ、甘く苦しい快感を生み出し、ナツキの全身へと広がっていく。
「中に出すぞ……っ」
 息を激しく切らしながらリュウトが告げた。喘ぎ声以外の声を出す余裕がなかったので、ナツキは返事をしなかったが、リュウトに返事を待つ気はなかったようだ。
 ドクンッとナツキの奥に熱い本流が注ぎ込まれ、その間リュウトの動きが止まった。それからゆっくりと息をつき、再び動き出した。
「んっ、あっ、はぁっ、あっ」
 ナツキの身体が再び揺さぶられる。前立腺の辺りをガツガツと突かれ、もう何も考えることができない。ただひたすら快感を追い続け、飲み込めなくなった唾液が唇の端から伝い落ちる。目元には涙の粒が浮かび、視線は虚空をさまよっていた。
 リュウトは一度引き抜き、ナツキの身体をひっくり返した。うつ伏せから仰向けになり、両足をリュウトに抱え上げられる。
「んっ、くっ」
 一気に貫かれた。そして今度は深い場所を小刻みに激しく揺さぶられる。ナツキは小さく悲鳴をあげた。
「あぁっ、そこだめっ……イクっ、やあぁっ……」
 ビクビクと打ち上げられた魚のように跳ねながら、ナツキは吐精していた。力尽きたようにぐったりとするも、追い打ちをかけるようにリュウトがねじ込んでくる。敏感になった粘膜は歓喜したように震え、自分の身体でありながら自分の身体とは思えなかった。
「あぁっ……やっ、あぁっ、あぁっ、んぁ……っ」
 ナツキはまるで壊れた人形のように激しく揺さぶられた。リュウトは獣のように荒い息を吐きながら、ナツキを犯すことにひたすら専念しているかのようだった。恋人同士のような甘い睦言もなく、ただ野獣のように交わっている。
 ふいに、リュウトがナツキの胸元に唇を寄せた。硬く尖る胸の突起を舌で撫でられ、電流のような衝撃がナツキの全身に走った。
「ひあぁっ……!」
 ビクビクっと全身を弾ませた。リュウトはさらに執拗に、ナツキの乳首に攻撃を仕掛けてくる。唇に含まれ強く吸われると、ナツキはまたビクビクと跳ね、喉を反らした。
 敏感すぎる身体がつらい。蔓の粘液の効果はまだ切れていないようだった。
 ぐいっと上半身を起こされた。代わりにリュウトが仰向けになる。ナツキはいつの間にか、リュウトの腰の上に座らされていた。
「疲れたから、ちょっと休憩」
 リュウトが深く息をついた。ナツキはたちまち疼き始める身体に、戸惑い、焦った。
「俺、どうしたら……」
「ナツキも休憩すれば? 疲れてるだろ?」
 リュウトの瞳が妖しくきらめいた。何かまた意地悪をされているらしい。
「……う……あ……」
 腰の疼きが止められない。ナツキは思わず自分の股間に手を伸ばし、屹立している自身をつかんだ。手のひらで上下に扱くが、それだけでは足りなかった。揺れる腰を抑えられない。
 ナツキは何度かためらったが、とうとう我慢ができなくなった。自分から緩やかに腰を動かし、体内にいるリュウトのものを抜き差しする。
「はぁっ、はっ……」
 本能しか頭にない獣になったような気分だった。実際、ナツキの頭にはもう、セックスのことしかなかった。熱で煮えたような脳に他のことを考える余地はなく、催淫剤と化した粘液の効果が切れるまでどうすることもできないのだ。
 リュウトの上で腰を動かすしか、疼きを抑える方法がなかった。夢中で快感を追っていると、ふいにリュウトが上半身を起こした。抱き寄せられ、唇を奪われる。
「んっ、ふっ……」
 ナツキの舌にリュウトの舌が絡みついてきた。息が苦しい。喘ぐナツキをなだめるように、リュウトがさらに口づけを重ねていく。
 耳元や首筋をリュウトの唇が這う。ナツキはぞくぞくと震えた。座った姿勢のまま、下からバウンドするように突き上げられて、小さく悲鳴をあげる。
「ナツキのお尻、とろとろだな。柔らかくて熱くて気持ちいい。ヴァーチャルだけじゃなくて、リアルでも抱きたい。会いたい、本物のナツキに」
 俺も、と言いそうになって踏みとどまった。
 ナツキは嫌がるように横に首を振る。
「……こ、こんなの……ゲームだから許されるんであって、リアルは……やだ」
「なんで? こんなに気持ちいいのに?」
「だってリアルでは、俺、普通の男だし……」
 消え入りそうな声で言うと、リュウトがふっと笑った。
「俺だってリアルでは普通の男だよ。そっか、残念。リアルのナツキのことは詮索しない。その代わり、ゲームの中ではいつでもセックスしてほしい」
「……ホント? 詮索しない?」
「うん。しない。ナツキが嫌なら、しない」
「……それなら……いいよ」
 頬を赤らめながらナツキが言うと、リュウトは嬉しそうに体勢を入れ替えた。
「んっ、あっ……」
 またガツガツと貫かれ、ナツキはたちまち何もわからなくなった。

「……はーっ」
 起き上がった那月は、自分の下肢を眺めて盛大なため息をついた。
 夢精どころではない、ズボンも下着もぐしょぐしょだ。
「なんてことだ」
 頭を抱えたい気持ちを押しやり、まずは着替えた。
 あれからリュウトとはセックスしかしていない。疲れて眠ったところで、タイマーが働いてゲーム終了となった。結局、風呂には入っていない。
「いや、俺はセックスするためにゲームを始めたわけじゃねえぞ。純粋にゲームを楽しむために……」
 床に手をついてがっくりと落ち込んだ。リュウトがどこの誰だかは知らないが、リアルで出会ったらぶっ飛ばしたい。
 果てしない疲労感で眠りたい気分だった。ゲーム中は横たわっているが、眠っているのとは違う。意識のどこかが必ず覚醒していて、休んではいないのだ。
 セックスの相手が美女なら、こんな気分にはならなかったのだろう。那月はゲイではないし、恋愛するなら女性がいい。ごく普通の男なのだ。
「どうしてこうなった……」
 頭の痛い問題だった。リュウトとはフレンド登録を解除すればいいのだろうか。そうすれば向こうからは探せないのでは。
 うっすらと期待を寄せていたアダルトゾーンは、思っていたのとはだいぶ違っていたし、これなら全年齢のほうに戻って普通にゲームを進めたほうがいいような気がする。
「……明日考えよう。もう疲れた……」
 とりあえず空腹を満たすために食事して、那月はさっさと眠ってしまった。

 土曜日の朝。
 那月はぼんやりと目を覚まし、ゲームをどうしようかとしばし考えた。
 朝のうちならリュウトはログインしていないかもしれない。その隙にフレンド登録を解除して、ブロックして、永遠に探せないように……。
 そこまで考えたら、急に名残惜しくなった。リュウトとのセックスは格別な気持ちよさで、なかなか味わえないもののような気がしたからだ。
 ハッとして頭を振った。リアルでも頭がおかしくなってきた。これはまずい。
 朝ごはんを食べてから、那月はベッドに横たわってヘッドセットを装着した。
 リュウトがいないことを願いながら……。

 宿屋のベッドからのゲーム再開だった。リュウトの姿はない。
 ログアウトするとその姿はなくなるのだ。逃げるなら今だった。
 ナツキは左手首の端末を操作して、リュウトとのパーティを解除し、フレンド登録も解除した。ブロックするかしないか迷って、それはやめておく。
 破れてしまった服は、壊れたアイテムになってしまうので、予備のものを身につけた。後でまた新しい装備を買い直そう。
「よし、普通にゲームやるか」
 まずはこのアダルトゾーンからの脱出だ。自由に行き来できるらしいが、どうやって全年齢のほうへ戻るのだろう。
 催淫効果は完全に切れており、問題なく行動できそうだった。
 宿屋から外に出るとこちらも朝だった。ゲームの時間とリアルの時間は進み方が違う。リアルで一日が過ぎる間に、ゲームでは何日も過ぎて行く。
 なので、時間の感覚が少しおかしくなる。
 アダルトゾーンとは言え、一応最初の村なので、出てくるモンスターの強さは全年齢のほうと変わらない。触手の森の蔓のようなモンスターは他にもいるのだろうか、と考えて、ナツキはぞっとした。アダルトゾーンは何が起こるかわからないので怖い。
 しかし全年齢ゾーンへはどうすれば戻れるのか、さっぱりわからないままだ。リュウトに聞いておけばよかったと後悔する。
 ナツキはまず、武器屋に行こうと足を踏み出した。
「あっ!」
 いきなり大声をあげてこっちを見た男がいたので、ナツキは心底から驚いた。
 その男はどこかで見たことがあるような気もするし、見たことがないような気もした。
 若い青年だが、がっしりしていて、とても強そうだ。眉目秀麗で精悍な顔つきをしている。武器も防具もレベルが高そうだった。
「あのっ」
 青年は迷わずナツキに寄ってきた。
「お一人ですか?」
「……? 一人ですけど……」
「あの、俺とパーティ組みませんか」
「ええ?」
 これから一人でゲームを楽しもうとしていたのに、また変なのが寄ってきた。
「一人は危ないですよ。アダルトゾーンですから」
「君といたほうが危なかったりしてね」
 冗談のつもりで言ったのだが、青年はぎくりとした顔を見せた。リュウトに続き、また下心満載で寄って来た男なのか……。
 うんざりしながらナツキは口を開いた。
「俺は一人で遊びたいの。純粋にゲームを楽しみたいの。男とセックスする趣味は持ち合わせてないの」
「俺の前に誰か寄って来たんですね?」
 図星をつかれてナツキは思わず顔を赤らめた。逃げ出すように走り出す。
「あっ、待ってくださいっ。本当に一人は危ないんですってばっ」
 腕をつかまれる。しぶしぶナツキは立ち止まった。
 そうだ、と思いつく。全年齢ゾーンへの戻り方をこの男に聞けばいいのでは。
「聞きたいことあるんだけど、アダルトゾーンから全年齢ゾーンに戻るにはどうしたらいいのか知ってます?」
「え? 戻れないですよ?」
「……え?」
 ナツキはぽかんと青年を見つめた。彼はとても真面目な顔でナツキを見返していた。
「一度こっちに来たらある条件をクリアしない限り戻れないんです。自由に行き来できるのは、その条件を満たした人だけですよ」
「……マジか」
 やられた、と思った。リュウトは自由に行き来できる話しかしなかった。ナツキができないことは知っていたはずだ。それなのに言わなかったのか。

つづく