悠久の大陸 23

(掲載日:2018年06月24日)

 辰泰はマンション暮らしだった。セキュリティのしっかりした家賃の高そうなマンションだ。その六階に彼の部屋がある。
 一人暮らし向けのマンションで、部屋数は少ないがリビングは広い。
「おまえ、金持ちの子か」
「大金持ちではないですよ」
 寝室を覗くと例のゲーム機があった。
「なあ、もし俺がおまえのゲーム機からログインしたら、俺はスオウになれるの?」
「……なれるかも、しれませんね」
「なってみてもいい?」
「は?」
 那月はゲーム機に近づき電源を入れると、ベッドに乗り上げていそいそとヘッドセットを装着した。
「ちょっとでいいからスオウになりたい」
「どうして」
「強いから」
 那月は嬉しそうな笑顔を浮かべながら、辰泰のベッドに横たわった。
「なんだよもう、寝てる間に身体にいたずらするぞ?」
 辰泰のぼやきが聞こえてきたが、那月は素知らぬ顔で目を閉じた。

 ウラクの町に出た。幸い、リュウトはいないようだ。
 内心で安堵しながら、スオウの姿をした那月は町並みを眺めた。視界がいつもと違う。視線の位置が違うのだ。スオウはナツキよりも身長が高い。
 端末を操作し、まずはステータスを確認する。あらゆるスキルの数値が高い。那月はドキドキした。興奮する。
 装備を見ると、強い武器ばかりだ。興奮する。
「これなら一人でもダンジョンに行けるかも」
 那月は喜々として歩き出した。地図を広げると、ナツキよりも遥かに載っている情報が多い。行ける範囲も全然違う。興奮した。
 ホログラムのように宙に浮いている地図から、見たことのない場所を選択する。目の前に文字が浮かぶ。「ミランディウムのダンジョンに行きますか。YES/NO」
 那月は迷わずYESを選んだ。一瞬でワープする。
「なにこれ、すごい……!」
 見知らぬダンジョンに着いた。
 そこは深い洞窟で、恐怖を覚えそうなほど鬱蒼としていた。那月はごくりとつばを飲み込み、意を決して足を踏み出す。今はスオウなのだ。怖くない。怖くない。
 無骨な剣をしっかりと握り直し、洞窟の中へと踏み込んで行く。
 いきなりコウモリが大量に飛んできた。
「わあっ」
 コウモリはただのコウモリではない。モンスターだ。しかも強い。
「あっ、あっ」
 盛大に何度も噛みつかれ、ヒットポイントがみるみる減る。那月は闇雲に剣を振るった。偶然当たった数匹が霧散する。
 必死で剣を振り回していたら、なんとかコウモリが消えた。ほうっと息をつく。魔法で傷を回復した。
「痛みまでリアルにするなよな……」
 ぼやきながら洞窟を進む。すると、巨大な狼が現れた。鋭い眼光と、大きな牙を持ち、グルルルルと唸り声をあげている。那月はたちまち足がすくんだ。
 後ろ足を蹴り上げて狼が宙に浮く。速い。
 逃げる余裕などなかった。気づけば那月の上に狼が乗っており、喉に噛みつかれていた。
 死ぬ。
 そう思った瞬間、すさまじいエクスタシーが全身を駆け抜けた。ピストンバイブに犯され絶頂を迎えた瞬間に殺されたあの光景が、脳裏に蘇る。
「うああああああああ……っ!」
 スオウの身体なのに。どうして。
 視界が暗転した。
 ハッと目を覚ますと、那月は洞窟の外にいた。死んだので外に出されたらしい。洞窟に入る前からやり直せということなのだろう。
 那月はがくがくと震える全身を鎮めるように、自分で自分を抱きしめる。あの瞬間の絶頂を忘れていない自分に愕然とした。ナツキとスオウではスキルの数値が違うのに。スオウの性的感度はナツキほど高くはないのに。
 那月は端末をいじって地図を出し、ウラクの町へと戻った。そのまますぐにログアウトする。

 憔悴した様子で起き上がり、ヘッドセットを取り外した那月を、辰泰が心配そうに眺めていた。
「那月、どうした?」
「……俺には無理だった」
「な、なにが?」
「俺には戦えない。スオウのステータスもスキルも使いこなせない。もっと楽に強くなれて、簡単に倒せると思ってたのに、身体がすくんで動けなかったんだ」
 小刻みに震える那月を、辰泰が近寄って抱きしめる。
「ごめん、スオウ。一回死んだ」
「いや、俺も無謀に戦って何回も死んでるし、それは、べつに」
 辰泰は那月の肩口に顔をうずめた。
「ステータスが高くても、スキルが多くても、使いこなすには慣れと技術が必要なんだ。コントローラーで操作するだけのゲームでもあるだろ? いかにボタンを早く押すかで結果が変わったり、複雑な操作で技が発動されたりみたいな。それと同じで、身体の使い方、武器の使い方、コツがいるんだ。那月はまだ戦闘に慣れてないから」
「……それだけじゃ、なくて」
「ん?」
 那月の声が震え、嗚咽混じりになっているので、スオウは顔をあげて彼の顔を見つめた。
「どうした?」
「……気持ち、よくて」
「え?」
「気持ちよく、なっちゃって」
「なにが?」
「死ぬって思った瞬間に、イッちゃったんだ」
「…………」
 ごくっと辰泰がつばを飲み込んだ。
「……えっと、それは……たぶん、那月のここに刻み込まれちゃった……っていう、やつかな?」
 辰泰は那月のこめかみの辺りに人差し指を当て、軽くトントンと叩いた。
 経験したのはゲーム内のキャラだが、那月本人の記憶や意識にも刻みつけられてしまっているようだ。
「……かも」
「あーやべえ、それはちょっと、俺の股間にくる」
「興奮するとこなの、それ」
「ゲームの中のナツキだけじゃなくて、リアルな那月も開発されちゃってるって思うと」
 那月の身体が押し倒された。辰泰が上にのしかかる。
「那月、好きだよ。愛してる」
「……辰泰……」
 那月はぼんやりと辰泰を見上げた。
 興奮した辰泰は自分の服を脱ぎながら、那月を裸に剥いていく。
 うっすらと色づいた乳首を舌先で転がされ、那月はびくっと小さく震えた。
「ふ……っ」
「乳首、好き?」
「……好き」
 甘噛みされた。
 唾液を絡ませながら辰泰は巧みに舌を遣い、少しずつ那月を狂わせていく。
「あ……あ……」
 那月は喉を反らしながら、甘い声を漏らす。男同士で身体を重ねることへの心理的な抵抗など、もはやどこにも残ってはいなかった。甘美な快楽に身を浸し、ただただ陶酔する。
 舌で突起を潰され、唇で喰まれる。軽く吸われ、那月はびくびくと小刻みに震える。
「はっ……はぁっ……」
 次に指先でつままれた。ぐりぐりとこねくりまわされる。辰泰の指先は感じやすい場所を見つけると、執拗なほどそこばかりをいじる。那月の前の前で星が散った。
「やっ、あ、そこばっか……やっ……」
「乳首気持ちいいの?」
 甘い声で問いかけてくる。那月はこくこくとうなずいた。
「頭、変になっちゃう……っ」
「もっと変になろう?」
 辰泰の手が那月の股間へと伸びた。じかに握られる。そこはすでに頭をもたげ、透明な蜜を垂らしていた。
「溢れてるよ?」
 辰泰の親指が、蜜を溢れさせている尿道口をぐりぐりとこねた。
「ひっ、あっ、だめっ……ぐりぐりしちゃ」
「ここいいの?」
「あぁっ、やぁっ……」
 辰泰の手が、竿全体を握った。根本から先端にかけて大胆にしごかれる。
「ふぁっ……あっ」
 先端の膨らみのくびれ部分を、親指と人差し指で作った輪でこねくりまわされる。
「やっ、もう、いくっ……!」
 那月の身体が小さく跳ねた。勃ちあがったものから白濁が吹き出し、辰泰が手で受け止める。すかさず彼はそれを那月の尻へと塗った。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 激しく息をつく那月の尻の窄まりに、まだ生温かい液体を塗り込められる。辰泰の指先が息づく窄まりに進入し、中の粘膜をぐちゃぐちゃとかき回してきた。
 那月が思っていた以上にそこは敏感になっていて、ズキズキと妙に疼く。今すぐ欲しいと思っているのだ。この身体が。
「……あぁっ……」
「すごく締め付けてくる。那月のここ。ほしいの?」
「……ぅん……」
 那月は紅潮した顔で、目を潤ませながら小さくうなずいた。
 辰泰は指をずぶずぶと埋め込んで抜き差しを繰り返していたが、ふと動きを止めて奥のほうの前立腺を指の腹で転がすようにした。びくんっと那月がのけぞり、目を見開く。
「ひっ……」
 喉がひくんと鳴り、那月の平らな胸が激しく上下した。生理的な涙がこめかみを伝い、小刻みに震えている。
「……だめ、だめ、だめ……いく、いく、い……っ」
「ここ気持ちいいの?」
「……きもちい、きもちい、あたま変になる……っ」
 那月がそう訴えたところで、ふっと指が消えた。
「あっ……」
 那月の唇から名残惜しそうな吐息が漏れる。
「ほしい?」
 問いかけられて、那月は壊れた人形のようにこくこくとうなずいた。
 仰向けの体制のまま両足を大きく開かれる。間に割り込んだ辰泰が、怒張を窄まりにあてがった。
(入ってくる)
 那月は待ちわびていたような気持ちになり、急に切なくなった。大きなものが強引に狭い粘膜を押し広げてくる。そこに何かを埋められるのが、当たり前のことのように思えるようになってしまった。
 もっと奥、もっと奥、もっと奥。ぐちゃぐちゃにしてほしい。そんな願望が頭をもたげ、那月は自分で自分が信じられない。この身体はこんなにも淫乱だったのかと愕然とする一方で、もともと自分はこういう人だったのではないかとさえ思えてくる。
 辰泰の膨らんだ先端が、那月の前立腺をごりごりと刺激してくる。何度も目の前で星が散り、意識が朦朧とする。
 那月は半ば身体を折り畳まれているような状態で、辰泰に強く抱きしめられながら、奥のほうをこねられた。突かれるのではなく、こねられている。浮いた足が否応なくピンと張り詰め、辰泰が動くたびにゆらゆらと揺れる。
「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ……」
 うめくような声がもはや誰のものなのかもよくわからない。
 中が熱くて充血しているのが自分でもわかる。どうなっているのかは不明だが、気持ちいいのは確かだ。昼間はあんなになかなか入らなくて痛かったはずなのに、まるで辰泰の形を覚えてしまったかのように今はスムーズだ。
 もはや性器と化した尻は快楽を貪ることしか知らず、本来の機能など忘れてしまったかのようだった。
 辰泰の動きが大胆になる。ギリギリまで引き抜かれて、ズンと根本まで突き入れられた。長いストロークに粘膜が悲鳴をあげそうになる。そんな風にされても気持ちよくなってしまうこの身体は、どこか壊れてしまったのかもしれない。
 やがてまた早いテンポで中を突かれ、那月はされるがままになる。前立腺を容赦なく突き上げられ、ビリビリと全身に電流のようなものが走る。肌が粟立つのも気持ちよすぎるせいだ。
 硬くしこる乳首はピンと張り詰め、時折、辰泰の指先で弾かれる。そのたびにじわりと快感が広がり、下腹部の熱はますます強くなった。
 自分ではもはやどうすることもできなかった。身体のコントロールがきかない。辰泰の意のままにされていることはわかっていたが、そこから抜け出すことは不可能だった。
「……あぁっ、いくっ、いくっ……!」
 口をついて出る言葉はそんなものばかりで、那月はびくんっとのけぞると、がくがくと揺れた。もう何度目の絶頂かわからないが、ずっとイッているような気がした。
 数えきれないほど口づけられ、口腔内に唾液を流し込まれる。苦しいので必死で嚥下するしかなく、飲むと辰泰が嬉しそうに笑う。口の中も性器かと思うほど敏感になっており、辰泰の指が入ってきてしゃぶらされた。もはや全身が性感帯だった。
 ヴァーチャルはシミュレーションで、今は実践なのだ。那月はぼんやりとそう思った。脳だけで感じていた快感を、今は全身の神経で感じている。ゲームの中でなかば強引に覚えさせられた快感は、肉をともなうと三倍も四倍も倍増する。
(……もう、だめ……死ぬ……っ)
 気が遠くなるほどの絶頂を感じながら、那月はとうとう意識を手放した。

つづく