悠久の大陸 22

(掲載日:2018年06月16日)

 那月は壁に手をつく形で後ろ向きにされた。背後にぴたりと張り付いた辰泰は、那月のうなじを舐めたり噛んだりしている。その手はせわしなく那月の腰や尻を撫でさすり、まだズボンの中に収まっている自身の勃起を押しつけたりした。
「……ふっ……」
 那月は耐えるようにじっとしていた。やっていることは大差ないが、やはりリアルはゲームよりも生々しく感じる。辰泰が尻の肉をつかみ、じっくりと揉みしだいてきた。
「……んっ……」
「いいお尻ですね。手に吸い付いてくる」
 よくわからない褒め言葉を発し、辰泰は那月の尻たぶを左右に押し広げるようにして持ち上げた。
 辰泰は急にしゃがみ、那月のきゅっと閉ざされた窄まりにそっと息を吹きかけた。
「んぅっ……」
 那月の身体がビクンと揺れる。
 辰泰はためらいもなく舌を覗かせ、那月の窄まりをそっと舐めた。那月がぎょっとする。
「やっ、あっ、舐め……んなっ……」
「だって、ほぐさないと入りませんよ?」
「やだっ……やっ、そんな、とこ……っ」
「本当にリアルでは初めてなんですね。力抜いてください。気持ちよくしてあげますから」
 辰泰は弾力のある舌で何度も窄まりをつつき、ぬるっと押し込んできた。
「ひゃっ……!」
 ぴちゃぴちゃと音を立てながら中を舐められる。那月は思わず喉を反らした。
「あっ、あっ……あっ……」
 ガクンッと力が抜ける。崩れ落ちる前に辰泰が支えてくれた。
「ちゃんと壁につかまっててください」
 次は指だった。唾液で濡らした程度の指で、こじ開けようとしてくる。中指の第一関節が埋まり、粘膜をぐにぐにとかき分けるようにして第二関節まで埋めてきた。何がどこにあるのか知っているような動きで、肉壁に圧をかけてくる。
「あぁっ、あっ……」
 熱い粘膜が辰泰の指を締めつけた。辰泰はゆっくりと、だが確実に、那月の感じやすいポイントを見つけてくる。どうしてそんなにわかってしまうのか不思議だったが、那月に考えるような余裕はもはやなかった。
 辰泰の男らしいごつごつとした指が、前立腺を優しくトントンと押してくる。那月はたまらず身をくねらせ、甘い吐息を漏らした。股間のモノは隆起し、透明な蜜をしたたらせている。
 一定のリズムを刻みながら、指の腹で柔らかく前立腺を押されると、那月の目が眩んできた。
「……も、だめ……っ、いく……っ」
 那月はビクビクと肩を震わせた。
 いつの間にか前に回っていた辰泰のもう片方の手が、那月の吐精を受け止める。そして迷いのない動きで、那月の尻の窄まりに塗り、残りを自分の屹立へと塗った。知らぬ間に辰泰はズボンの前をくつろげていて、那月は思わずちらりと盗み見た。
(……おおきい)
 ごくりとツバを飲み込む。脳が煮えたように眩んでいる。初めてしているはずの行為なのに、初めてのような気がしないのはやはりあのゲームのせいだ。こんなに抵抗感が薄れてしまうなんて。
 辰泰の指でだいぶほぐれてきたそこに、大きなものがあてがわれた。
(……あ、入る……)
 待ち望んでいたような気分になり、身体は歓喜しているのだと思い知らされる。だが、ほぐし足りなかったのか、思いがけない痛みで瞬時に全身がこわばった。
「ひっ……うっ……」
 やはりヴァーチャルなゲームの中とは違うのだ。筋肉は思っていた以上に硬く、ほぐしたつもりでも、まだそれほど柔らかくなってはいない。
「力、抜いて」
 耳元で辰泰が囁いてきた。苦しそうだった。先端部分が食い締められて痛いのだろう。
「……や、むり……っ」
 那月は必死で深呼吸をした。痛みでどうしても身体がこわばってしまう。ゲームの中ではあんなに楽に入ったのに、リアルではこんなにも苦しいのか。全身に脂汗が吹き出し、呼吸さえも止まりそうになる。
「い……たい、抜い……」
「むり。中途半端に入ってるから、抜けない。力抜いて。ゆっくり……ゆっくりやるから」
 そう言われても。那月は心の中で思った。自分で力加減をコントロールできるのなら、こんなに苦労はしていない。
 辰泰が背後から手を伸ばして、那月の前を握った。そこは後ろからの痛みですっかり萎えてしまい、辰泰が優しく握り込んでくる。やわやわと揉まれ、優しく撫でさすられ、下腹部からじわじわと湧く緩やかな快感に、那月は気持ちを寄せた。
「ん……っ、ふ……っ」
「気持ちいい?」
 辰泰が後ろから耳元で囁く。那月は小さく頷いた。
「……よく、なってきた……」
「もっと気持ちよくなるから、息吸って、吐いて、全身の力抜いて」
「……ん……っ」
 言われるがままに息を吸い、吐いた。辰泰の手に握り込まれる快感に浸るようにしながら、少しずつ全身の力を抜いていく。
「あっ……!」
 辰泰は那月が緩んだ瞬間を見逃さなかった。いきなりズンッと奥まで突かれ、那月は小さく悲鳴をあげる。
「入ったよ。根元まで、全部」
 耳元で囁くように辰泰が報告してきた。同時に辰泰の腰が小刻みに揺れ、ズクズクと奥を突かれる。
「うっ……うぅ……っ」
 那月はされるがままになりながら小さくうめいた。
 辰泰は律儀に前をいじりながら、後ろからも突いてくる。那月は自分がどんな状態になっているのか、もうよくわからなかった。
 熱い粘膜を辰泰の先端が何度もこじ開けてくる。前立腺を狙うように突き上げられる。前から後ろから同時に湧き上がる快感に身を投じていると、だんだん意識が朦朧としてきた。
 辰泰は初めのうちはゆっくり浅く動いていたが、那月の身体が少しずつ行為に慣れてくるにつれて、みるみる大胆になっていく。熱に浮かされたように無我夢中で腰を叩きつけ、その容赦のなさに、那月の足に力が入らなくなってきて膝がガクガクと震えた。
「うっあっ、あっ、あぁっ」
 奥を突かれるたびに声が出た。いくら人があまり来ない場所だとは言え、ここは校内だ。那月は自分の手で自分の口を塞ぎ、必死で耐えた。
「んっ、くっ……ふっ」
「先輩の中、熱い。すごく気持ちいいです。先輩は?」
 那月は答えなかったが、辰泰は彼の下腹部で蜜を垂らしながら屹立しているものを優しく撫で、耳元で含み笑った。
「ふふっ」
 辰泰は那月の腰を抱きながら、遠慮なく深く貫く。那月はのけぞり、生理的な涙を溢れさせながら、全身をびくびくと震わせた。絶頂と同時に吐精する。
「んっ、あっ、あぁっ……あっ」
 食い締める那月に触発されるように、辰泰も低くうめく。那月の体内めがけて熱い迸りを放った。
 ガクンと那月が力をなくす。崩れ落ちそうになった身体を、辰泰が慌てて支えた。
「先輩、どうでした? リアルなセックス」
「……ヴァーチャルのほうが気持ちよかったかもしんない……」
「えっ? すごく気持ちよさそうでしたよ?」
「……だって俺、感度の数値があがりすぎて、触られるだけで気持ちよくなっちゃう身体だったから……」
 そこまで言ってから、那月はハッとした。瞬時に青ざめる。とんでもない情報を辰泰に与えてしまった。
「い、いや……今の、忘れて……」
「忘れませんよ?」
 辰泰がにやりと笑う。
「それじゃあ、こうしましょう。ヴァーチャルはヴァーチャルで楽しんで、リアルではリアルの感度を高めていきましょう。先輩の身体、開発のしがいがありますよ」
「……えっ?」
 戸惑う那月にはお構いなしで、辰泰がさっさと話を進めていく。
「俺、一人暮らしですから。いつでもやりたい時にやりたいだけやれますから」
「……え……っ」
「これからが楽しみです」
 嬉しそうな辰泰の顔を、那月は唖然と見つめた。

 中に出された精液を辰泰の指で掻き出され、熱にうかされたようなため息をつきながら那月はまぶたを閉じた。何か弱みを握られた気分だった。
 知られてはいけないことを知られてしまったような。越えてはならない一線を越えてしまったような。身体の奥の奥まで知り尽くされてしまったような。
 辰泰が那月の恋人ならそれでも構わなかったが、恋愛感情があるわけではない。ただケモノのように、互いが快楽に溺れただけにすぎない。
「俺はずっと先輩のこと好きでした。こんな風にしたいっていつも思ってました。願望が叶ってとても嬉しいです」
 いきなり後ろから耳元で告白された。
「頭の中ではいつも先輩のこと裸にして犯してました。どこを触ると感じるのか、どんな声で喘ぐのか、想像して、シュミレーションして、いつこうなってもすぐに対応できるように」
「……ずっと、そういう目で、見てたのか」
「気づいてなかった先輩が鈍いんです。俺は隠してませんでした」
 うなじに口づけられる。びくっと那月が小さく揺れた。
「……んっ……」
「俺の家に来ますか、今日」
「……え、いや、今日は……」
「俺はいつでも歓迎です。その気になったら言ってくださいね」
「…………」
 伏し目がちの那月の瞳が揺れた。誘惑に乗りそうな自分に内心戸惑っていた。恋愛感情なんてないのに、どうして。
「愛してるよ、那月」
 うなじに顔をうずめながら、辰泰が囁いた。那月は、つい最近同じことを言われたなと思った。
 ハッとした。振り返る。驚きの眼差しで辰泰を見つめた。
「どうしました?」
 辰泰が怪訝そうな顔をする。那月は穴があきそうなほど彼を見つめた。
「……スオウ……?」
「えっ?」
 反射的に辰泰の目が泳いだ。那月は瞬時に確信した。
 スオウは辰泰よりも遥かに体格がいい。もっと戦闘に向いた筋肉質な身体で、身長ももっと高い。スオウの顔はどちらかと言うと日本人というよりも外国人に近く、髪の色も金髪寄りの茶色だ。言われなければ辰泰とスオウは結びつかない。
 那月は走馬灯のようにさまざまなことを思い出した。初めて出会った時、スオウはナツキを見て驚いていなかったか。
「……俺を、見つけるのは、簡単だっただろ……」
 ゲーム内の姿形をリアルに近づけ、同じ名前を名乗っていた。すぐに気づかれて当然だ。あの広い世界で、そんなすぐに知り合いに出会うなんて誰が思うだろうか。
 辰泰の手が、那月のこめかみに触れた。
「初めて見た時はすごくびっくりした。リアルの那月そのまんまで、この人バカなのかなって。でもすぐ愛おしくなって。俺のものにしたくなって」
「……リュウトのことは、どう思った……?」
「最初は殺してやろうかと思ったよ。俺の那月になんてことしやがったんだって。でも」
「二輪刺し提案されて、あっさり落ちやがって」
「話のわかるいいヤツだと思ったよ。那月を二人で共有するのはちょっと複雑でもあったけど、それはそれで楽しかったし」
 辰泰の顔が近づいてきて、唇にキスされた。
「俺は那月とやれれば、それだけでもよくて。俺のこと愛してほしいとか、そんな高望みはしてません。ただ、俺のこと拒絶しないでもらえれば、それでいい」
「……ほんとに?」
 那月は上目遣いで辰泰を見つめた。辰泰はにっこりと微笑んだ。
「ほんとに」
 再び口づけられた。
「でもリュウトを好きになるのはナシですよ? 俺のことを好きにならないのなら、誰のことも好きにならないでください。カラダだけの関係でいてください」
「……カラダ、だけの、関係」
「それでバランスが保たれてるんです。三人の奇妙なトライアングルの」
「……わかった」
 那月は素直にうなずいた。
「でも」
 辰泰が耳元で囁いた。
「俺のことは内緒にしてください。これは二人だけの秘密です。リアルでも知り合いで関係を持ってることは、リュウトには内緒です。いいですね?」
「…………」
 こくりと那月はうなずいた。辰泰が微笑んで、また那月に口づける。
「じゃあ、帰りましょうか。今から教室に戻っても、もう間に合わないし」
「帰るって、どこに?」
 那月が問いかけると、辰泰は微笑みながら口を開いた。
「どこって、俺の家ですよ」

つづく