悠久の大陸 17

(掲載日:2018年01月29日)

 メインストーリーは順調に進んだ。
 雪平海咲(ゆきひら・みさき)の原作小説の内容に添ったストーリーが展開される。プレイヤーはその物語を俯瞰で眺める第三者のような立場で、登場人物たちからお使いを頼まれたり、モンスターを倒すよう言われたり、遠い場所まで行ったりする。
 わりと地道な内容なので、人によっては退屈でかったるくて面倒くさかったりもするのだろう。
 実際、スオウは途中からすでに飽きていて、ナツキの傍でずっと文句を言っている。
 自由に勝手に行動したいタイプほど、メインストーリーは苦手なのだろう。
 ナツキはそんなスオウを無視して、メインストーリーを満喫していた。
「おまえ、さっきからうるさいよ。楽しさが半減するだろ?」
 振り返って文句を言うと、スオウが捨てられた子犬のような目で見つめてきた。
「俺はただ、せっかくアダルトゾーンにいるんだから、ナツキとエッチなことをしたいだけで」
「俺はゲームをやりに来てるんだってば」
「メインストーリーに参加してる最中はエッチなことできない仕様になってるから、俺のストレスが溜まる」
「うるせーなー、もう」
 そう言えばリュウトが一向に戻って来ない。ステータス画面を見ると、どうやらとっくにログアウトしている。リアルが忙しいのだろうか。
「…………」
 リュウトはナツキが他の男とずっと一緒にいることとか気にならないのだろうか。スオウのわかりやすい嫉妬を見ていると、こちらのほうが普通の反応のような気がする。逃げれば探してでも追いかけてくるのに、どうして今は放置されているのだろう。
(わっかんね。考えるのやめとこ)
 メインストーリーを進めてみて、ひとつ気になっていることがある。ナツキはスオウを見た。
「ん?」
「なあ、スオウって雪平海咲の原作小説って読んでる?」
「読んでない」
 即答だった。
「やっぱりな。メインストーリーへの興味のなさから、そうだろうと思った」
「アニメなら見たことあるよ」
「リュウトはどうなんだろう」
「あいつのことは今はいいじゃん。いないんだから」
「……おまえってホント……」
「ん?」
「……いや、なんでもない……」
 ナツキは呆れたようにため息をつき、メインストーリーをさらに進めた。スオウもしぶしぶついてくる。
 メインストーリーのモンスターは徐々に強くなっていき、戦うのがだんだん手強くなる。とはいえスオウのレベルが高いこともあり、わりとさくさく進められた。彼はさっさとメインストーリーを終わらせたいと思っているので、非常に協力的だ。
「第一話終わったー。第二話も進めようぜ」
 メインストーリーの第一話が終わり、エンディングも見終わった。ナツキがそう言うと、スオウは「えー?」と嫌そうな反応を見せる。
「第二話はまた今度にしない? 結構長いし。息抜きに違うクエストやらない?」
「おまえってホントに……」
「ん?」
「わかったよ。第二話はまた今度にする。で、どのクエストやるんだよ?」
「幻惑の実を拾いに行きたい」
「…………」
 スオウの下心が見え見えで、むしろ清々しさすら感じた。
 ウラクの町に戻り、幻惑の実を拾うクエストを選んだ。スオウのリクエストに応えてしまったのは、メインストーリーの第一話を丸ごと手伝ってもらったからでもある。
 あと、少なからずナツキも、興味がないわけではなかった。スオウがそれほどまでに推してくるこのクエストが、いったいどういうものなのかだんだん気になってきていた。
 クエストを受けた後、二人でスフィルの森へと向かう。
 森には数々のモンスターがいたが、たいしたことなかった。そもそもスオウと一緒にいたら、どのモンスターも雑魚だ。剣を振り上げ、戦うことにも慣れたナツキは、スオウと共にサクサクとモンスターを倒して行く。
 森の奥へと着くと、幻惑の実はそこらじゅうに落ちていた。十個どころじゃない、何百個はありそうだった。確かにこれならすぐにクリアできるだろう。
 拾い歩いても特に何事も起こらない。何故スオウはこのクエストを推してきたのだろう。純粋に楽で報酬のいいクエストとして推してきたのだろうか。いや、そんなはずはない。
 ナツキは警戒しながら幻惑の実を拾ったが、あっさりと十個集まってしまった。小さな袋に詰める。
「んじゃ、ウラクの町に戻ろうか」
「その前にナツキ、ちょっと実を食べてみる?」
「え?」
 スオウが幻惑の実の殻を剥き、中身を差し出してきた。警戒しながらもナツキはちょっと舐めてみて、それから口の中へと入れた。味はよかった。美味い。
 咀嚼して飲み込んだ。変な味はしなかった。だが、異変はすぐに起きた。
「……あっ」
「素直に食べちゃダメじゃん。警戒心があるようでないなあ、ナツキは」
 スオウが呆れたように笑う。ガクンと膝が崩れたナツキは、スオウに肩を触られてビクンッと跳ねた。
「あ、あ、あ、あ……なに……?」
「幻惑の実。別名、欲情の実。簡単に言うと、媚薬」
「……媚薬……」
「ただでさえも感じやすいのに、さらに感じやすくなっちゃって」
「……スオウ、おまえ……それ、知ってて」
「知ってるよ。でもナツキだってそう思ってたから警戒してたんだろ?」
「……そう、だけど……ここまで、なんて」
 身体の底から熱いものが這い上がってくる。全身がぞくぞくとした。まだ何もしていないのに下腹部が痛いほど張り詰めている。
「……どう……どう、したら……」
「俺とセックスしよう」
「こん、な……場所、で? もし、他に人が、来たら」
「じゃあ、隠れよう」
 スオウは簡単にそう言ってのけると、ぶつぶつと呪文を唱えた。シュルンと透明なドーム状のものに二人が包まれる。
「……これは……」
「これはシェルターみたいなもんかな。マジックミラーみたいなっていうか、外から見ると何もいないけど、中からは外が見える。ただ透明になるだけじゃなくて、誰かが通過しようとした時にぶつからずに通り抜けることができる。しかも誰も気づかない」
「……なんて、便利な……」
「一回一時間まで。時間がないから、さっさとやろう、ナツキ」
「えっ? あっ……」
 スオウの手でたちまち装備を脱がされた。ちょっと触れられるだけでも感じてしまうので、ナツキはビクビクと震えることしかできない。
「すごいな。全身が性感帯だ」
 スオウが素直に喜んでいる。
「……おまえの、目的……は、これか」
「うん。かわいがってやるよ、ナツキ」
「……なんで食べちゃったんだ……俺……」
 後悔先に立たず。自己嫌悪で落ち込んだ。警戒していたつもりだったが、中途半端な警戒だったのだ。そもそも、彼の推しているクエストを素直にやってしまったところから間違っていた。今後はもっと気をつけなければ。
 ナツキは四つん這いの姿勢で苦しげに呼吸を繰り返す。スオウが背後から腰に触れた。それだけでビクッと弾かれたように跳ねてしまう。スオウの指が背中を伝う。
「あっ、あっ……あぁっ、んぁっ……」
 どうにもならない。感じる以外のことが何もできない。
 尻を撫でられた。
「ひゃっ、あっ」
「すごいな、全部感じるんだね、ナツキ。ここも、ここも」
「あっ、やぁっ」
 太ももからふくらはぎにかけて撫でられた。
「頭も?」
 スオウの手が伸ばされ、髪を撫でられる。頭の皮膚も同じように敏感になっていた。
「あっ、ひゃあっ……」
「イキそう?」
 問われてこくこくと頷いた。
 イキそうというよりも、もうイッている。何度も何度も立て続けにイッているような感覚だ。
 痛いほど張り詰めている下腹部の猛りも、先走りの透明な蜜が溢れすぎていて、ポタポタと地面に落ちる。もう自分の身体がどうなってしまっているのか、よくわからない。
「だ……大丈夫、なの。この、状態……人体に、影響……」
「大丈夫。ヴァーチャルだから。すべては脳の中だけの出来事だよ」
 ヴァーチャルのような気がしなかった。この鋭敏な感覚はあまりにもリアルだ。
「ゲーム終わらせて現実に戻れば、いつも通りの日常だから」
(ほんとかな……)
 内心では疑わしかった。こんなにおかしくなっているのに、何もなかったように元の自分に戻れるのだろうか。リアルの自分にも何らかの変化が起きて、明日からは普通に暮らせなくなっているのではないか。そう考えるととても怖くなる。
 スオウの手が身体のどこかに触れるたびに、ビクンッと跳ね上がり声をあげてしまう。
「ぅあっ……あっ……」
「ナツキ、やばい……すごく興奮する」
 熱に浮かされたような声でスオウがつぶやき、下腹部だけをさらけ出した。ナツキの腰を抱くと、屹立の先端を窄まりにこすりつけてくる。
「あっ、ひゃあぁっ、やだっ、挿れるな……あぁあっ……!」
 感じすぎて頭が変になりそうだった。熱を帯びた窄まりは、物欲しげにぱくぱくと開閉し、まるで誘っているかのようだ。
 スオウは先端部分だけをぐっと押し込み、一気に引き抜いた。
「ひぃっ、あぁぁあああっ……」
 ナツキの頭の中が真っ白になる。
 スオウは再び先端部分だけを窄まりに押し込み、また一気に引き抜いた。興奮に突き動かされたように、同じことを何度も執拗に繰り返す。そのたびにナツキは打ち上げられた魚のように盛大に跳ね、あられもない声をあげた。
「……やだっ……それ、やだっ……頭、変になる……っ」
「感じすぎだろナツキ。気づいてる? 自分でも尻振ってるよ? そんなに気持ちいい?」
「あぁっ……うぅっ……」
 ナツキはがくがくと小刻みに痙攣し、もう返事すらできなくなっていた。
 スオウが再びひくついている場所に先端をあてがうと、ナツキの喉がひくりと鳴る。今度はすべてを一気に根元まで押し込んだ。
「うぁあああああっ……」
 ナツキの全身がビクビクと跳ね、同時に下腹部で張り詰めていたものが、暴発するように白濁を飛び散らせる。
「トコロテンだね」
 スオウは嬉しそうだ。
 止まらない吐精にナツキが身悶える。腕も足も全部が震えて、もう力が入らない。
「あぁっ……あぁっ……あぁっ……」
「気持ちいいみたいだな」
 緩やかにスオウが腰を突いた。柔らかな粘膜がかき乱される。
「あっ、やっ……」
 嫌がるようにナツキが頭を振る。スオウはそれを肯定と捉えて、前立腺に狙いをさだめた。硬い先端がガツガツと前立腺にぶつかってくる。ナツキは目を見開いた。
「ひっ、あっ、ダメっ、そこやっ……やだっ……やだぁっ……」
 気が狂いそうになる。
 ただでさえも感じやすい身体になっているのに、前立腺を集中的に攻撃されたら狂ってしまう。
 もうどうにもならない身体はスオウのやりたい放題をただ享受するだけで、自分の意思でどうにかできるものではなくなってしまった。
「ナツキ、前立腺好き?」
 緩やかに腰をグラインドさせながら、スオウがそこばかり刺激してくる。ナツキはガクガクと震えながら、壊れた人形のようにこくこくと頷いた。
「あっ、す、好き……前立腺、好き……っ」
「もっと突いてほしい?」
 ナツキはガクガクと頭を縦に振った。
「……突いて……もっと、突いて……っ」
 スオウは改めてナツキの腰をつかみ、これ以上入れない深い場所まで猛りを押し込んだ。
「もっと気持ちいい場所教えてやろーか」
 スオウが何を言っているのか、頭の働かないナツキにはさっぱりわからなかった。

つづく