(掲載日:2017年03月02日)
スオウの顔がナツキの顔に寄せられ、深く口づけられる。ナツキはまぶたを閉じた。
「……んっ、ふっ……」
前立腺をいじられながらのキスは、気が遠くなりそうなほど気持ちよかった。スオウの指が何度も執拗に体内を往復し、ナツキはもう疲労困憊だった。
「……もう、無理っ……」
「まだ俺が挿れてません」
「……やだ……もう、許して……」
「嫌です」
スオウがナツキの両足を抱え上げ、肩に乗せた。否応なくナツキの身体が折りたたまれたようになる。さんざんいじられ、じくじくと疼いている窄まりに、スオウはようやく屹立の先端を当てた。
「あぁ……」
吐息混じりの声が、スオウの唇から漏れた。
「俺がナツキの中に入ってる……」
陶酔したような表情で、スオウは腰を進めていく。すっかり敏感になった粘膜に大きなものを押し込まれ、ナツキはガクガクと震えた。
「……あっ、あっ……あっ……あ……」
「挿れただけで気持ちいいの? ナツキのここは貪欲だな」
深い場所まで貫かれ、ナツキは喉を反らす。
「……だめ……イク……動いちゃ、や……っ」
「無理だよ。俺だってイキたいんだから」
淡く発光する紫色の花畑の中で、スオウは腰を突いた。ナツキの全身がビクビクと跳ね、小さな悲鳴があがる。
「……ひゃあ……っ」
「さっきから何回もイッてるね。感じてる姿も美しいよ、ナツキ」
スオウは緩やかに突いた。
「もっと俺で感じて」
「……あっ……」
ゆっくりだったのは最初だけで、だんだん早くなっていく。ガツガツと突かれるたびに、ナツキの身体もガクガクと揺れる。
ナツキの視界の中で、スオウは幸せそうだった。
じくじくと疼く粘膜をぐちゃぐちゃにかき回され、ナツキの意識は何度も遠のいた。這い上がってくる快感に翻弄され、乱され、もうわけがわからない。
「あぁっ」
またビクビクと身体が跳ねて、何度も押し寄せてくる快感に、身を委ねるしかなかった。
「……また、イクっ……」
どうすればいいのかわからないほどに、感じやすくなった身体。スオウに激しく揺さぶられ、ナツキは盛大に達した。
「……んあぁっ、あああああっ……」
ほぼ同時にスオウも達していて、ナツキの中に思い切り放つ。ビクビクと揺れる腰はとにかく熱く、スオウを締めつけて離さなかった。
「……っ、……っ」
何度も何度も達した身体は震えが止まらなかった。そんなナツキを見ているとたまらなくなったのか、スオウが再び体内で動き始める。
「ナツキ、愛してる。もっと俺で感じて」
激しく腰を打ちつけてきた。ナツキはまたビクビクと跳ねて、やがて意識を手放していった。
強い香りがすると思いながらナツキは目を覚ました。
視線を向けるとすぐ傍にあったのは、淡く発光しているレンザニアの花だった。ナツキはまだ紫色の花畑の中にいた。
横たわるナツキをスオウはずっと眺めていたらしい。
「……おまえ……」
ふつふつと怒りが湧いてきた。スオウがにやりと笑う。
「パーティ解除します? こんなに敏感なナツキを一人で旅させるのは、危険すぎて怖いなあ」
ナツキの腹の上を、スオウの指先が滑った。
「あっ」
「ナツキには俺が必要ですよ。ずっと俺の傍にいてください」
「……必要かどうかは、俺が決める」
ナツキは唇を噛んだ。スオウにいいようにされたことが悔しかった。
「あ、代わりに花を三十個摘んでおきました。後はこれを届ければクエスト完了です」
「えっ?」
「俺は呪われませんよ。呪いをブロックするアイテムを装備してますから」
「なっ……」
ナツキがわなわなと怒りで震えた。
「おまえ、それ知ってて言わな……っ」
「だって聞かれてないですから。言う義理もありませんよね」
スオウがにやりと笑う。
「呪い、解いてほしいですか? 解除アイテムも持ってるんですよね」
「……おまえ……っ」
さらに怒りで震える。
そんなナツキの唇に、スオウは身を屈めてキスをした。
「ほんとかわいいですね。やりたい放題してごめんなさい」
愛おしいもののように抱きしめられた。ほだされたわけではないが、ナツキの怒りは少しだけ鎮まった。
呪いの解除アイテムで、ようやく動けるようになる。さんざんな目に遭った。ナツキは深く息をつく。
どろどろになった身体をどうしようと途方に暮れた。
「魔法で綺麗にできますけど?」
「えっ、そんな魔法もあるのか」
「アダルトゾーンでしか使えない魔法だけど。使ってほしいですか?」
使ってほしいに決まっている。しかし、ナツキはためらった。
「……交換条件とか、あるんじゃないだろな」
「俺とのパーティを解除しない。これが条件です」
「……わかった」
ナツキは再び深く息をついた。
「でも俺、男とは恋愛しないよ。そういう趣味とかねえし」
「俺とセックスさえしてくれれば文句はありませんよ」
「…………」
スオウはナツキの手を取り、手の甲に優しく口づけた。
「…………っ」
ビクッとナツキが小さく跳ねる。スオウがにやりと笑った。
「今のナツキはたったこれだけでも感じる身体だから、俺はそれで充分です」
「…………」
ナツキは頬を赤く染めながらも、悔しくて唇を噛んだ。
どうしてこんなにも感じやすい身体になってしまったのだろう。蔓の粘液による催淫効果はもう切れているはずなのに。
ため息をついていると、左手首の端末が音を奏でた。
誰かのメッセージが入ったらしい。
(メッセージ……?)
ぎくりとした。メッセージのやり取りをするほどの知り合いはまだいないに等しい。だとすれば、思い当たる人物は一人しかいなかった。
焦りながら端末に届いたメッセージを開く。リュウトからだった。
(どうして。パーティもフレンドも解除したはずなのに。ID記憶されてた?)
ドキドキしながらメッセージを読んだ。
『今どこにいる?』
短いメッセージだった。本来なら、一度関係を断てば、ID検索でもしない限りすぐに見つけることはできない。
ユーザー名とIDは別物なので、普段ユーザー名でやり取りをしているだけなら、IDを相手に記憶されることはないはずだった。ブロックしていれば当然ながらID検索で探し出すこともできないのだが、ナツキはリュウトをブロックしなかったので、IDをリュウトに覚えられていたら、探すこともできるしメッセージを送ることもできてしまう。
だが、IDは覚えやすいユーザー名とは違い、十桁の英数字の羅列なので、普通ならメモでもしない限り覚えられない。
どちらにせよ、ナツキはリュウトに見つかってしまったということだ。どうしよう、と悩んでいると、スオウが端末を覗き込んでこようとした。慌てて隠す。
「どうしたんですか?」
「な、なんでもない」
「なんでもないようには見えないですけどね」
「おまえには関係ないから」
ナツキは返事を打ち込んだ。
『ごめんなさい。リュウトとはもうお別れします』
送信すると、すぐに返事がきた。
『で、今どこにいる?』
リュウトは怒っている。ナツキは直感でそう思った。
何も告げずに逃げてしまったナツキに、リュウトは怒っているのだ。
ナツキはしばらく考えて、文字を打った。
『他の男といます。俺のことは諦めてください』
送信。すぐにまた返事がきた。
『俺の質問に答えて。今どこにいる?』
はあ。ナツキは深いため息をついた。
『幻惑の森』
送信。また返事がきた。
『了解。すぐ行く』
「えっ」
ナツキは慌てた。他の男といるとメッセージを送ったはずだが、嘘だと思われてしまったのだろうか。
「どうしました?」
スオウから問いかけられた。リュウトが来てしまう。説明しなければ。
「あ、あの、俺の初めての相手がここに来ちゃうんだけど……」
「……初めての、相手」
スオウが絶句した。隠してもどうせバレると思って正直に言ったのだが、まずかっただろうか。
「俺をアダルトゾーンに連れてきた人」
「……そんな奴が、いたんだ……」
スオウが思っていた以上にショックを受けているので、ナツキはためらいがちに頷いた。
「う、うん……隠してたわけではないんだけど」
視界に人影が入り、ナツキはハッとした。
リュウトがとても険しい顔で立っている。
「リュウト……」
ナツキの視線を追うようにスオウが振り返る。彼もまた、険しい表情になった。
「あいつか」
レンザニアの花の合間を縫って、リュウトがこっちに向かってくる。反射的にナツキは強張った。
怒っているリュウトがどう出て来るのかわからなくて身構える。
「ナツキ」
ふわっとリュウトの腕がナツキを包み、優しくギュッと抱きしめられた。ナツキは驚いて目を丸くする。
「……えっ……?」
「また会えてよかった」
「……えっ? ……えっ?」
視界のすみでスオウが愕然としている。青ざめる彼のことなど意にも介さない素振りで、リュウトはナツキの首筋に顔を埋めてきた。
「あ、あの、リュウト」
「もう俺から逃げようとするな」
耳元で囁かれる。どうしたらいいのかわからず、ナツキはついスオウを見つめてしまった。